石狩湾耳鼻科
花粉症ー牧草

牧草による花粉症

 明治維新後の北海道開拓期、稲は作れないだろうと諦めていた北海道に、それならばと酪農の振興を目指し導入されたのがイネ科牧草です。もともとヨーロッパ原産のこれら植物は急速に広がり、現在では牧草地だけでなく道端にごく普通に繁茂するようになっております。 

カモガヤ(オーチャードグラス)、オオアワガエリ(チモシー)、ナガハグサ(ケンタッキーブルーグラス)などが代表的なものです。これらの花粉はみな単孔粒と呼ばれる形で、顕微鏡でみてもその判別がつかないだけでなく、その蛋白組成も似ております。牧草花粉症の患者さんはイネ科の何れの花粉でも同じようにアレルギー症状を引き起こします。この時期に街の中を漂うポプラの綿毛の印象が強いためか、多くの患者さんがポプラ花粉症と思い込んで受診しますが、本当のところは牧草の花粉症なのです。ちなみにポプラの綿毛は花粉ではなく、その種、実であり、ポプラの花粉飛散時期は4月下旬頃です。

 牧草花粉症は、日本での花粉症の研究がはじまった比較的早い1960年代に札幌からはじめて報告されております。それ以前にはこの花粉症の存在は知られておらず、くしゃみ、みすっぱな、鼻づまりの特有の症状を、「夏風邪」として間違って診断されておりました。飛散時期に一致して札幌では5月下旬から7月上旬まで患者さんの症状が続きます。道東の釧路などでは飛散時期が札幌より1ヶ月ほど遅れ、7月が中心になっております。

 牧草花粉に先立つ白樺花粉は、今年は1995年以来の約10年ぶりの大量飛散を記録し、飛散の少なかった昨年は症状が軽く油断していた患者さんを苦しめたようです。5月、6月は白樺と牧草の花粉が重複して飛散しております。この時期に症状のある場合、検査なしで原因がどちらかを判定することは困難です。また患者さんには白樺花粉症のみの人、牧草花粉症のみの人だけでなく、両方を持っている人などさまざまです。日常診療の中で、患者さんから、毎年いつ頃薬を使いはじめたら良いのか、いつまで薬を飲まなければならないのかとよく質問されます。これに正しく答えるためにはアレルギー性鼻炎がどの花粉によっておこっているのか、ハウスダスト、ダニなども原因になっているかどうかなどを知っておく必要があります。原因抗原の検索は皮膚テスト、あるいは少し検査料が高くなりますが採血によるアレルギー抗体の測定によって行われます。どの耳鼻科でも簡単に測ってもらうことができます。何年も症状に苦しんでいる方は特に一度近くの医療機関で検査してもらうことをお勧めします。無駄なく薬を効率的に使用するためにはぜひ必要です。

 またそれぞれの花粉が道内各地でどのように飛散しているかの情報は道立衛生研究所のホームページなどで逐次報告されておりますので、患者さんはこれらの情報を有効に利用されるのがよいと思います。

本州と異なり梅雨のない6月、7月は観光客も多く集まるように、本来北海道にとって絶好の季節です。原因花粉を知り、上手に花粉症に対処することが大事です。

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